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東京地方裁判所 平成10年(ワ)2922号 判決

甲事件原告

松田高明

甲事件被告

江口隆太

ほか三名

乙事件原告

松田高明

乙事件被告

大日本自動車交通株式会社

主文

一  甲事件被告江口隆太、甲事件被告吉田和久及び乙事件被告大日本自動車交通株式会社は、甲事件・乙事件原告に対し、各自金二一九万六七七四円及びこれに対する平成七年三月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  甲事件被告同和火災海上保険株式会社は、甲事件・乙事件原告に対し、金七五万円及びこれに対する平成一〇年二月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  甲事件被告千代田火災海上保険株式会社は、甲事件・乙事件原告に対し、金七五万円及びこれに対する平成一〇年二月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  甲事件・乙事件原告のその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、甲事件・乙事件原告と被告江口隆太、被告同和火災海上保険株式会社及び被告千代田火災海上保険株式会社との間においては、甲事件・乙事件原告に生じた費用の二分の一と被告江口隆太、被告同和火災海上保険株式会社及び被告千代田火災海上保険株式会社に生じた費用のうち、一〇分の一を被告江口隆太、被告同和火災海上保険株式会社及び被告千代田火災海上保険株式会社の負担とし、その余を甲事件・乙事件原告の負担とし、甲事件・乙事件原告と被告吉田和久及び被告大日本自動車交通株式会社との間においては、甲事件・乙事件原告に生じた費用の二分の一と被告吉田和久及び被告大日本自動車交通株式会社に生じた費用のうち、一〇分の一を被告吉田和久及び被告大日本自動車交通株式会社の負担とし、その余を甲事件・乙事件原告の負担とする。

六  この判決は、第一項ないし第三項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  甲事件被告江口隆太、甲事件被告吉田和久及び乙事件被告大日本自動車交通株式会社は、甲事件・乙事件原告に対し、各自金二六〇九万五四九五円及びこれに対する平成七年三月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  甲事件被告同和火災海上保険株式会社は、甲事件・乙事件原告に対し、金四五一万円及びこれに対する平成一〇年二月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  甲事件被告千代田火災海上保険株式会社は、甲事件・乙事件原告に対し、金四五一万円及びこれに対する平成一〇年二月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

車線変更しようとしたタクシーが、後方から直進してきた乗用自動車と衝突し、乗用自動車がガードレールに激突して一回転した交通事故に関し、その乗用自動車に同乗していた者が、衝突した両車両の運転者に対してはいずれも民法七〇九条に基づき、タクシー会社に対しては、民法七一五条、自賠法三条に基づき、いずれに対しても損害賠償金の支払を、両車両が加入していた自賠責保険会社に対しては、自賠法一六条、三条に基づき、いずれに対しても自賠責保険金の支払を求めた事案である。

一  前提となる事実(判断を記載した部分以外は争いがない。)

1  事故の発生

次の交通事故(以下「第一事故」という。)が発生した。

(一) 発生日時 平成七年三月一〇日午後一〇時ころ

(二) 事故現場 東京都大田区玉川一丁目二番一三号先路上

(三) 加害車両 乙事件被告大日本自動車交通株式会社(以下「被告大日本自動車交通」という。)が所有し、甲事件被告吉田和久(以下「被告吉田」という。)が運転していた普通乗用自動車(足立五五け六八八四、以下「吉田車両」という。)と、甲事件被告江口隆太が運転していた普通乗用自動車(品川三四ほ九六七六、以下「江口車両」という。)

(四) 被害者 江口車両に同乗していた原告

(五) 事故態様 江口車両は、トンネル入口付近の事故現場の道路を進行し、トンネル入口付近にさしかかったところ、進行方向に向かって右側の車線を同一方向に走行していた吉田車両が、急に左にハンドルを切って江口車両に接触をしたため、江口車両はガードレールに激突し、横転した。

(六) 結果 原告は、本件事故により、頸部、腰部及び頭部の各挫傷、右腕神経叢障害、右肘切創の傷害を負った。

2  自賠責保険契約

(一) 被告大日本自動車交通は、本件事故当時、吉田車両に関し、甲事件被告同和火災海上保険株式会社(以下「被告同和火災」という。)との間で自賠責保険契約を締結していた(原告は、自賠責保険契約の当事者として被告吉田と主張しているが、他方で、吉田車両を所有するのは被告大日本自動車交通と主張しているから、自賠責保険契約の当事者は、被告大日本自動車交通の趣旨と理解することができる。)。

(二) 被告江口は、本件事故当時、江口車両に関し、甲事件被告千代田火災海上保険株式会社(以下「被告千代田火災」という。)との間で自賠責保険契約を締結していた。

3  責任原因

(一) 被告吉田は、車線変更をするに際し、後方の安全を確認する注意義務があるのに、これを怠り、左後方の安全を確認することなく車線変更をして本件事故を発生させた過失がある。したがって、民法七〇九条に基づき、原告に生じた損害を賠償する責任がある。

(二) 被告大日本自動車交通は、吉田車両を保有し、自己のため運行の用に供していた。また、被告大日本自動車交通は、タクシー業を営む会社であり、被告吉田を雇用していた。したがって、自賠法三条、民法七一五条に基づき、原告に生じた後記損害を賠償する責任がある。

4  損害のてん補

被告大日本自動車交通は、原告に対し、三五二万六一〇五円を支払った(なお、被告大日本自動車交通は、その他に治療費として一五二万四三四〇円も支払っているが、これは解決済みであり、原告の請求内容に含まれていない。また、被告同和火災は、原告に対し、自賠責保険金として一二〇万円を支払ったと主張するが、これに沿う証拠はなく、かえって、丁三号証によれば、被告大日本自動車交通から加害者請求を受けていたことが認められるので、右の主張は採用できない。)。

二  争点

1  被告江口の責任原因、好意同乗減額の有無

2  原告の後遺障害の有無及び程度

3  原告の損害額

第三争点に対する判断

一  被告江口の責任原因、好意同乗減額の有無

1  本件事故に至る経過及び態様について

証拠(甲一二、乙三ないし六、九、原告本人)によれば、次の事実が認められる。

(一) 事故現場は、いわゆる環状八号線の第二京浜国道方面(北西方向)から第一京浜国道方面(東南方向)に向かう車線上であり、地下道に入る手前部分である。その付近は、三車線(第一京浜国道方面に向かって左側に歩道が設置されている。以下、この歩道寄りから「第一車線」ないし「第三車線」という。)で時速五〇キロメートルの速度制限がなされており、本件事故当時の路面状況は湿潤であった。

(二) 原告は、被告江口の高校時代の友人であり、平成七年三月一〇日、被告江口が所有し、かつ、運転する江口車両に同乗して遊びに行った。そして、帰宅する途中の同日午後一〇時ころ、江口車両は時速約六〇キロメートルで走行し、事故現場付近にさしかかった。原告は、その際、助手席に同乗していた。

被告吉田は、吉田車両を運転し、第三車線を時速約六〇キロメートルで走行し、事故現場付近にさしかかった。吉田車両は、江口車両の右前方を走行していたが、被告江口は、吉田車両を追い抜こうとしてやや加速した。他方、被告吉田は、第二車線へ車線変更をするために左合図を点滅させたが、左後方の安全をまったく確認することなく第二車線へ進路を変更し始めた。そのため、被告江口は、咄嗟にハンドルを左に切って衝突を回避しようとしたが、間に合わず、江口車両の右前角部と吉田車両の左前側部が衝突した。江口車両は吉田車両に押され、左右の縁石に順次衝突し、横転滑走して停止した。

2  被告江口の責任原因及び好意同乗減額に関する判断

(一) 被告江口の責任原因

被告江口は、江口車両を所有し、自己のために運行の用に供していた。また、右前方を走行する吉田車両が左合図を点滅させていたのに、制限速度を一〇キロ以上超過する速度まで加速して漫然と吉田車両を追い抜こうとし、本件事故を発生させた過失がある。したがって、被告江口は、自賠法三条、民法七〇九条に基づき、原告に生じた損害を賠償する責任がある(被告吉田の過失が競合して本件事故を発生させたといえるから、民法七一九条により、被告吉田及び被告大日本自動車交通と連帯して賠償する責任がある。)。

(二) 好意同乗減額の有無

被告吉田及び被告大日本自動車交通は、本件事故発生には被告江口の過失も競合しており、かつ、原告は江口車両の好意同乗者であるから、その損害の算定にあたっては相当程度の減額がなされるべきであると主張する。

しかし、1で認定した事実によっても、原告は、友人である被告江口の車両に同乗したにすぎず、被告江口が危険な運転をする蓋然性が高いことを承認して同乗したとか、危険な運転をすることに関与したなどの事情は認められないし、現に、被告江口の運転は、過失が認められるとはいうものの、自動車が本来有する一般的危険以上の危険を生じさせるものではないから、原告が同乗していたことの一事をもって損害を減額する理由にはならない。

したがって、被告吉田及び被告大日本自動車交通の主張は理由がない。

二  原告の後遺障害の有無及び程度

1  認定事実

前提となる事実、証拠(甲二、三、五ないし七、八の4、一〇の2、一一、一二、原告本人、調査嘱託の各結果)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告は、本件事故直後意識を失い、救急車で池上城南病院へ搬送されて治療を受け、X線検査及びCT検査がなされたが異常はなく、一日入院して翌日帰宅した。その後、被告江口の紹介により、平成七年三月一四日から和田外科医院で診察を受けたところ、頸部、腰部及び頭部の各挫傷、右腕神経叢障害、右肘切創の診断を受け、翌一五日から入院した。

原告は、入院中、創部処置を受けながら消炎鎮痛処置及び神経ブロックによる治療を受け、同年四月一五日に退院した。

(二) 原告は、その後、同医院で通院治療を続け、同年四月二六日には筋電図検査を受けたが、異常所見はなかった。原告には、右上肢の知覚障害などが存続しており、同年八月までは概ね一か月に一〇日前後(八月末日までに合計四九日)、同年九月からはやや頻度は低下してきたが、平成八年二月二三日までに右の四九日を含めて合計六五日通院し、この時点で、右上肢(特に尺骨神経領域)の知覚障害、握力低下、右肘関節部筋緊張、右肩甲部から上肢にかけての電撃痛、頸部から両肩甲部にかけての疼痛及び筋緊張感、背部痛が残存し、症状固定の診断を受けた。その後、握力低下、右肘関節部筋緊張、右肩甲部から上肢にかけての電撃痛、背部痛は改善され、現時点においては、右上肢(特に尺骨神経領域)の知覚障害、右上肢の筋萎縮(左と比べて一センチメートル)、頸部から肩甲部上肢にかけての疼痛が残存している。また、頸部神経根の圧迫テストであるジャクソンテスト、スパーリングテストはいずれも陽性である。

(三) 原告は、本件事故当時、エンジンの部品の一部などを作成する有限会社髙田商会に勤務し、製品を納入先に運ぶような仕事をしていたが、和田外科医院を退院した後の平成七年四月三〇日に退職した。その後、症状固定の診断を受けた後の平成八年三月からビルの賃貸管理業などを業とするハウスビルディングに勤務し、ここを平成一〇年七月に退職した後は同じ業種の株式会社シティプランニングに勤務し、いずれにおいても営業の仕事を行っており、自動車を運転することもある。右上肢の知覚障害などは、株式会社シティプランニングの仕事にあまり影響はしていないが、有限会社髙田商会において、本件事故の前年である平成六年に年間四九七万円の収入を得ていたのが、株式会社シティプランニングでは、平成一一年においても、年間三七八万四二〇五円の収入にとどまっている。

(四) 原告は、残存した症状について、自動車保険料率算定会第一調査事務所における事前認定手続において、骨折などの異常所見がなく、医療記録、後遺障害診断書及び医療照会による検査結果によれば、神経学的な異常所見に乏しく、症状が将来においても改善しないとの説明が困難であることを理由に、非該当との判断を受けている。

他方、和田外科医院の和田信裕医師は、原告に残存した症状について、次の意見を有している。すなわち、自覚症状を医学的に証明することは困難であるが、右上肢の知覚障害については、上肢の神経は頸髄より神経根として発生し、それが正中、橈骨、尺骨神経となり分布するので、頸部の損傷により上肢に障害が起こり得ることは十分考えられ、原告の場合も頸部挫傷が原因と考えられる。そして、五年、一〇年、二〇年といった長期的な経過を追えば、改善される可能性はあると考える。また、右上肢の筋萎縮は、神経損傷によるものか、あるいは、疼痛のため使用しないことによるもの(廃用性萎縮)であるなどの原因が考えられるが、長期的に見れば、ある程度の回復は望める。

2  後遺障害に関する判断

(一) 原告の主張

原告は、症状固定時において、右上肢(特に尾骨神経領域)の知覚障害、握力低下、右肘関節部筋緊張、右肩甲部から上肢にかけての電撃痛、頸部から両肩甲部にかけての疼痛、筋緊張感、背部痛が後遺障害として残存し、これらは、自賠法施行令二条別表の後遺障害等級第九級一〇号の「神経系統の機能・・に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの」には至らないが、少なくとも第一二級一二号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」を超える程度のもので、第一一級に相当すると主張する。

(二) 裁判所の判断

1で認定した事実によれば、症状固定時に原告に残存した症状のうち、右上肢の知覚障害及び筋萎縮、頸部から肩甲部上肢にかけての疼痛以外の症状は、すべてその後に解消しているから、後遺障害とはいえない。頸部から肩甲部上肢にかけての疼痛は、比較的一貫して訴えられているものであるが、医学的に証明することは困難であり、MRIなどの他覚的所見もなく、当面回復が困難といえる症状であるとまで認めるに足りない。また、右上肢の筋萎縮は、神経損傷によるものであると認めるには足りない上、廃用性の萎縮であれば、リハビリなどで筋肉を使用すれば回復するといえるから、後遺障害とはいえない。他方、右上肢の知覚障害については、医学的証明は容易ではないものの、原告は、事故後まもなくから一貫してこの症状を訴えており、頸部神経根の圧迫テストであるジャクソンテスト及びスパーリングテストの結果は陽性である。そして、主治医の意見を前提にすれば、右上肢の神経は頸髄より神経根として発生しており、頸部挫傷が原因と考えて矛盾はないから、具体的に神経がどのような状態にあるかは不明ではあるものの、本件事故により残存した症状であることについて、一応の合理的説明は可能であるというべきである。そして、これは、五年以上の一〇年、二〇年といった長期的経過を追えば改善される可能性はあるが、裏を返せば、少なくとも、五年以上は改善されない症状といえるから、後遺障害に該当するというべきである。

ところで、原告は、株式会社シティプランニングにおいて、自動車の運転をしたりしており、後遺障害は仕事にそれほど影響していない。この事情と、先のとおり、症状について一応の合理的説明をすることは可能であるものの、具体的にどこがどのようになっているかについては他覚的に証明できないことをも併せて考えると、原告の右上肢の知覚障害は、これに頑固性を認めることは困難であるといえるから、自賠法施行令二条別表の第一四級一〇号の「局部に神経症状を残すもの」に該当するというべきである。そして、先の回復可能性のある期間を踏まえると、原告は、症状固定時から五年にわたり平均して年五パーセントの割合による労働能力を喪失したというべきである。

なお、株式会社シティプテンニングでの収入は、有限会社髙田商会での収入より二〇パーセント以上減少しているが、両社では、その職務内容は異なるし、会社の所得水準自体同じとは限らないのであるから、右の労働能力喪失率を否定する理由にはならない。

三  原告の損害

1  入院雑費(原告主張額四万一六〇〇円) 四万一六〇〇円

入院雑費としては、一日あたり一三〇〇円の三二日分で四万一六〇〇円を認める。

2  休業損害(原告主張額三三〇万〇〇〇〇円) 二五〇万五四二四円

原告は、本件事故当時、年間四九七万円の収入を得ており、有限会社髙田商会を退職した後の八か月間について、完全に労働できなかったとして休業損害を主張する(退職するまで給与が支払われていたか否かは不明であるが、原告が主張する退職後の八か月間について検討する。)。

しかし、和田外科医院の和田信裕は、就業不能期間としては退院時である平成七年四月一五日までと診断しており、また、退院後は同年八月までこそ一か月に一〇日程度は通院していたが、その後は、病状固定時である平成八年二月二三日までの六か月間に一六日しか通院していないこと、最終的に自賠法施行令二条別表の後遺障害等級第一四級一〇号に該当する後遺障害が残存したにとどまることなどの事情を総合すれば、有限会社髙田商会を退職した日の翌日である平成七年五月一日から同年八月末日までの一二三日間については一〇〇パーセント、その後、同年一二月末日まで(ここまでで合計八か月)の一二二日間については五〇パーセントの限度で労働能力の制限を受けたと認めるのが相当である。

なお、原告が再就職をしたのは、平成八年三月であるが、右の事情に照らすと、この時期まで就職できなかったことについて、本件事故と相当因果関係を認めるには足りないといえるから、右の八か月間就職せずに収入がなかったことについて、すべて相当因果関係を認めることは当然にはできない。

したがって、年間四九七万円を基礎収入とし、右の労働能力の制限割合を前提に休業損害を算定すると、二五〇万五四二四円(一円未満切り捨て)となる。

(計算式)

4,970,000×(1×123+0.5×122)/365=2,505,424

3  逸失利益(原告主張額二二七八万〇〇〇〇円) 一〇七万五八五五円

原告の本件事故当時の収入である年間四九七万円を基礎収入とし、労働能力喪失率を五パーセントとして、ライプニッツ方式により、年五分の割合によって五年間の中間利息を控除すると(係数四・三二九四)、一〇七万五八五五円(一円未満切り捨て)となる。

(計算式)

4,970,000×0.05×4.3294=1,075,855

4  慰謝料(原告主張額三五〇万〇〇〇〇円) 二一〇万〇〇〇〇円

本件事故の態様、原告の負傷内容、入通院の経過、残存した後遺障害の程度及び内容に照らすと、慰謝料としては二一〇万円(後遺障害分一〇〇万円、その余について一一〇万円)を相当と認める。

5  損害のてん補

1ないし4の損害総額五七二万二八七九円から、原告が被告大日本自動車交通から支払を受けた三五二万六一〇五円を控除すると、損害の残額は二一九万六七七四円となる。

四  後遺障害に基づく自賠責保険金

二2(二)で判断したとおり、原告の後遺障害は自賠法施行令二条別表の第一四級一〇号に該当するから、自賠法一三条一項、同法施行令二条一項の二のへ、別表により認められる自賠責保険金は、被告同和火災及び被告千代田火災に対し、各七五万円となる。

第四結論

以上によれば、原告の被告江口、被告吉田及び被告大日本自動車交通に対する請求は、不法行為に基づく損害金として、各二一九万六七七四円(不真正連帯債務)と、これに対する平成七年三月一〇日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で、被告同和火災及び被告千代田火災に対する請求は、自賠法に基づく保険金として各七五万円と、これに対する平成一〇年二月二七日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 山崎秀尚)

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